D_basic*2024 | 基礎演習D 2024 |第9回|サービスの企画3

応用課題 = "うたがう"
6月3日|グループによる企画提案3

本日のMENU

1|進行確認

■ 今後の予定と本日のゴール

 

1. 調査データの発表(5min/1人*4=20min)

チームで選択した領域について、追加フィールドワークを行った上で、得られた事実、気付いたこと、考えたことに関するデータを共有する。

 

2| 360度探索をやってみよう

 

360度探索は、デザイン会社グラグリッドによって生み出された「自分の無意識の思考を探索する手法」である。お題を設定し、その特徴をあらゆる角度から30個の言葉で書き出す。時間制限を設けてできるかぎり多くのことを書き出すことで、自らの潜在的な考え方に気づき、自分でも意識していなかったことまで発掘することができる。

詳細はこちらから:デザインのしたじき「360度探索」

 

■授業内ワーク

1. お題は「〈_____〉の意味を捉え直す」とする。

(※〈 〉内は自分たちのチームが設定する最重要なキーワード)

2. 全員椅子から立つ

3. 制限時間10分で対象の特徴を書き出す。

4. すべてのマスを、グループメンバーでがむしゃらに埋める。

5. 共有して、それまで意識していなかった視点、たとえば自分たちが「大切にしたいもの」「意外だったもの」「これまで意識していなかったもの」などの観点から2つ程度選んで、それらを組み合わせてアイデアの芽として役立てる。

3|アイデア発想と対話の方法

以上をインプットとして、アイデア発想のフェーズに移る。アイデア発想の方法とその違いを体験し、チームでより良い企画を生み出す技法を身につけよう。

 

2-1. 否定と肯定による対話の違いを体感する

アイデアを発想する際には、否定から始めないことが重要である.

次のような実験をしてみよう.

 

■ エクササイズ:実験してみよう(20min)

批判することが如何に合意形成を減速させるか、実験してみよう。
「基礎演習Dの他のクラスの学生との親睦を深め、最終課題に対する志気を上げるために、全クラス合同の交流イベントをしよう」という提案を、批判と肯定で実験してみる(2人一組).

 

【実験1: No!, and】(2分)

提案に対していろいろマイナス点を挙げて、とにかく否定する。
提案する側は負けないで打開策を提示し続ける.

 

【実験2:Yes ! 】(役割を交代して:1分)

提案に対して「いいね!」とまず肯定し、良いと感じる点をほめる。

 

【実験3:Yes ! and...】(役割を交代して:2分)

提案に対して「いいね!」とまず肯定し、提案する側はそれを受けて追加の提案を提示し続ける。

 

 

【共有と考察】

実験1,2,3を受けて、考える。
同時に、批判的な意見が必要な状況を考えてみる。

 

態度が着眼点を決めることについては、以下の記事を参照。

参考:デイリーポータルZ「斜にかまえる、かまえないを意識的に切り替えるとどうなるか」

 

4|参考:発想の原理と解説(後で読んでおいてください)

 

4.1 発想法とは

発想については、プロジェクトの企画の際に必要になることが多いので、以下の文章は、空き時間によく読んで理解しておくこと。

 

■ 発想のシンプルな原理

どんな領域であっても、デザインを行うためにはアイデアをつくり出す発想の過程は決して欠かすことができない。アイデアの原理は意外にシンプルであることはよく知られている。発想することを論じた古典的名著「アイデアのつくり方」を著したジェームズ・ヤングは、広告業に従事した長年の経験を元に、アイデアを生成する一般的原理として「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と結論づけている。

 

つまり、どんなに画期的で斬新なアイデアだったとしても、それは全く頭の中に無いことがいきなりゼロから生成されるのではなく、実は前から知っていたことと別の知っていたことが思考のジャンプによって組みあわさって生みだされたものであり、その組み合わせこそがアイデアなのである、ということである。

 

■ アイデアという結果を見る前に

それでは、その既存の要素を新しく組み合わせるということは一体どうやって導けるのだろうか。ヤングは同書の中で「物事の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい」と解説しているが、誰にでも見える表面上の関連性ではなく、深く洞察し、一見見えないものごとの繋がりを見出せるかどうかにかかっていると言える。

 

また、ゲームクリエイターの宮本茂は、アイデアを「複数の問題を一気に解決するものである」と定義した。それぞれの制約条件の中で通底する部分を読み取り、絶妙に繋がるようにアイデアという針を通すこと、と解釈すればヤングの言葉と近づいてくることがわかる。

 

例えば、ゲームのプレイヤーが「ゲームの世界観に没入する」にはどうすればいいかと、「ゲームのルールを効果的に学習する」ためにはどうすればいいかを、それぞれ個別の問題として考えるのではなく、それらを一石二鳥のように、同時に成り立たせることこそがアイデアである、ということだ。

なぜ、マリオはチュートリアルなしですぐに遊べてしまうのでしょうか。実はこれ、開発者である宮本茂さんが「説明なしに触ってすぐに遊べるゲーム」を目指して、最初の面である1-1を非常に緻密に設計したからなんです。 つまり、マリオの1-1を遊ぶことで、ユーザーは自然にマリオの世界のルールや遊びかたを学ぶことができる構造になっているんですね。

マリオにはチュートリアルが存在しない

物事の関連を推し量り、何かを導いていくような考え方は、学校教育で主流の「ひとつに定まる解」に向かうものだけでなく「ひとつに定まらない、別々の答えで成り立つもの」も存在する。記号学者のC・S・パースは、このような特殊な推論の方法を、帰納でもなく演繹でもない、第三の推論の方法として、「アブダクション」と呼んだ。

 

発想には思考のジャンプは必要であるが、それは決して偶然に空から降ってくるものではない。大地をつたって自分という幹や枝に染み渡って熟成した結果、咲く花のような一連の因果関係をもったものとして捉えてみよう。

 

頭が固いと悩んでいる人でも、意識して自分の考え方の枠組みを変化させる訓練を繰り返すことで学ぶことはできるはずである。また、想像力が豊かであると自負する人でも、想像力と固定観念は常に表裏一体であるそれらを越えるために強制的にシャッフルさせ、単独では気付きにくい新しい回路に接続させる仕組みがあれば、より多くの手がかりを増やすことができるだろう。発想法は、そういった知恵を形式化したものである。

 

初心者は勘違いしやすいが、発想法とは日本語で言えば「術(method)」のことであり、遵守すべき法(Law)ではない。それに従えば結果が出る方程式というわけでもない。あくまで発想をサポートする枠組みの一つと覚えておきたい。

 

■ 発想法の種類:4つの分類

心理学者のJ・ギルフォードは、人間の思考には方向性を広げていく「発散思考」と、逆に方向性を絞っていく「収束思考」の二つがあり、創造的な活動は、この二つの思考を繰り返しながら行われるとした。この視点をもとに整理すると、膨大な数がある発想法も、狙っているポイントによって以下の4 つの技法に分類することができる。

 

1:発散技法

論理にとらわれずに、様々な角度からできるだけ多くのアイデアを生みだそうとするアプローチのもの。代表的なものがブレーンストーミングである.

 

2:収束技法

発散思考により集めたバラバラなデータをまとまりのあるものに集約し、有効な情報を形成していくアプローチのもの。代表的なものがKJ法である。KJ法も大変重要なのでどこかで学んでおくと良い。

 

3:統合技法

上記の発散と収束を繰り返しながら進めていくアプローチのもの.

今回の演習で行ったブレインライティングは、これにあたる。

 

4:態度技法

直接アイデアのアウトプットを目指すものではなく、主にクリエイティブに考えるための基礎的な態度を問うアプローチのもの。

 

 

4.2. 定番の発想法

ここでは、定番のアイデア発想の方法を2つ紹介する。2つとも一般常識に近いほど有名である。グループワークでタイミングがあえばつかってみよう。

 

■ブレインストーミング

通常「ブレスト」と略される。集団による並列思考を活かした発散的発想支援の方法で、企画会議に使用される最もポピュラーなもの。1930 年代に、オズボーンによって考案され、世界中に広まった。この技法の背景には、“本人にとってはつまらないアイデアに思えても、それが他の出席者には別の素晴らしいアイデアをひらめかせるかもしれない”と いう考えがあり、自由な発想でアイデアを生み出すことで、ほかのメンバーの頭脳に刺激を与えることを狙うものである。他人の脳との連鎖的な刺激が発想を生 むからこそ、ブレーンストーミング法(脳の嵐)と呼ばれる。

 

【一般的な方法】

ひとつの場を囲んだメンバー(オンラインでもオフラインでもよい)で、ひとつのテーマに関して発言し合い、多様な意見を抽出する。以下の4つの原則を守って行う。

 

■ 注意点(ブレストの4つの原則)

自由奔放
固定観念から逃れるために自由な発想を歓迎する。
とっぴな意見、その場の思いつきでもかまわない。

批判厳禁
どんな意見が出ても、批判してはいけない。
生み出すことだけに集中して、評価は一切行わない。

質より量
数で勝負する。一定の量を産出する中から、
結果的に質の良いものが生まれる可能性が高まる。

便乗発展
他の人の案を元に、出てきたアイデアを結合し、
改善して、発展させる。転がし続け、思考をストップさせない。

この段階では、出てきたアイデアについて評価(よしあしをつける)することはタブーである。評価することは後回しにして、出すことに集中する。

 

 

■ブレインライティング法

発想法として広く知られるブレインストーミング法の短所を改善したもの。発言する代わりに用紙に書いてアイデアを可視化し、 他者の発想に便乗しながらアイデア発想する方法論である。(日本創造学会

 

【一般的な方法】

1)グループでテーマを決める.

2)ワークシートの1番上の3マスに5分間でまずアイデアを3つ書く.

3)5分経過したら隣のメンバーにシートを渡す(時計回り).

4)シートを渡されたメンバーは、上に書かれたアイデアに便乗して、
 5分間で次の行に3つのアイデアを書く. 

5)同様に繰り返し、自分の所に自身のシートが戻ってきたら終了.

6)全員のシートを一覧し、各自魅力的なアイデア3つに赤ペンで☆マークをつける.

 

 

■それぞれの欠点

上記した発想法は、それぞれ欠点もあることが知られている。

ブレストは、しばしば話題が横滑りして単なる連想ゲームになってしまい、焦点の定まらない話し合いになりやすい。これは方法のせいというより、焦点をあわせつつ膨らませていくのは、それなりのコツがあるということである。

 

一方で、ブレインライティングは言葉を記述して繋げていくので脱線は比較的少ないが、粛々とした個人作業になりやすく、個々の脳が共鳴していくようなエキサイティングな盛り上がりは少ない。

 

ブレインストーミングはアメリカ発祥で、ブレインライティングはドイツ発祥である。アイデアをどう生み出すかは、決して機械的なものではなく、国民性やそれぞれのキャラクターも大きいといえるだろう。手法は手軽に使える気がするが、誰がやっても同じように結果が出るというものではないし、1回2回やってみただけで「使える・使えない」を結論づけられるものではないことは覚えておきたい。

 

4.3. アイデアという難しさ:頭に浮かぶものと固定観念

アイデアは頭の中で産み出されるものである。では、頭の中に浮かぶものとは何だろうか。なにかの出来事に関する感想や、考えた言葉は、自分でつくりだしたもの、と思われがちであるが、そうではない。俳句や詩を詠む際、使われる言葉が、初心者ほど固定観念に陥りやすいことは良く指摘される。

たとえば、星や灯は必ず「瞬く」と表し、センチな人は「うるむ」と言います。雨は必ず「しとど」と降り、果物は必ず「たわわ」に生ります。紅葉や赤いカンナは必ず「燃え」、空や水や空気は必ず「澄む」で、帰路は必ず「急ぐ」とし、自転車は、必ず「ペダル踏む」とやります。

 

俳句:四合目からの出発

 

ほとんどの人は、自分で見聞きした以上のことはなかなか想像できないのであり、考えたつもりが頭に浮かんでくるのは、他で見たなにかの影響だったりするのである。我々は自由に考えたつもりでも、固定観念に縛られていることを自覚しておきたい。

 

逆に言えば、現代人のように、みんなと同じものを見て、みんな同じことをしている以上 は、特別な自分らしさ(みたいなもの)を出すような文章が自然に形成されるわけではない。だからこそ、新しい言葉を学んだり、知らない世界に足を運んで自分の考え方を刷新したり、単発の知識ではない接点を生むための方法を身につけることが必要だ。

 

4.4たくさん出すことの意味

広告などのマスコミ業界のアイデア生産のトレーニングでは、一人で一晩でアイデア100個が最低ラインとよく言われる。まずはともあれ「数」なのだ。頭の中にあるモノをいったん全部出し切ってからが、それまで思いもよらなかった組み合わせのアイデアが出るときであり、勝負どころなのである。

 

参考記事(世界的デザイナー奥山清行の講演より

それからもうひとつ、さっきアマチュアとプロの話をしました。アマチュアというのは実はすばらしいアイディアを持っていて、それでプロよりも非常にいい思いつきをするんですね。プロというのはものを知っているだけに、実は一番保守的です。長年同じことをやっているプロというのは、実はアマチュアよりもインスピレーションという意味では、はるかにレベルは低いです。

 

ところがなぜプロがプロたる仕事ができるのかというと、アマチュアはたった1枚の企画書、1枚の絵、たった1個のアイディアに満足して先に進まない。プロは最初はろくでもないアイディアが出てきて、なかなか会議でもアイディアが出ない。だけどもそれを100回続けて、100個の中から1個を選んで、そういった人間が予算を取って100人集めて、合計1万個の中から1個のアイディアを出す。いいものが出るのが決まっているというシステムを作るから、プロはプロたり得るのだと信じます。プロというのはシステムで仕事をする人間である、と。

 

5|アイデア発想の実践

 

5.1 本日の授業内ワーク

コンテンツとサービスの選択、先週のキーワード(5つの制約要因)や追加調査で得た付箋を眺めつつ、具体的な企画につながっていきそうなアイデアを出していく。授業内に最低10案を出し、手応えのあるものがでなかった場合は次回演習までかけて発想していく。

 

次回演習ではスタッフとの相談の上で1つに絞る。その次にはもう企画プレゼンであるので、ここで浅すぎるアイデアや、新鮮味の全くないアイデアしか手元にないと、それ以上進めなくなるので、しっかり考えよう。

 

 

またこの課題は、グループで考えることに大きな意味がある。「4|発想の原理と解説」を読んだ上で、かならずグループでの発想にチャレンジすること。「ひとりで3つづつ」のように分担して個別の脳だけで考えてしまうと、結局個人の想像力の制約を超えられない。

 

※メイキングの記事を書くために、画面キャプチャやチャットなどの記録を残しておくこと。

 

 

5.2 アイデアシート(参考)

各自のFigjamで以下の画像のような「ひな形」をじぶんたちで作って、それを複製しながら数を増やしていく。

細かいところまで似せなくても、ヘッダのチーム番号、ナンバー、3つの項目(スケッチ、タイトル、ポイント)がセットになっていればOK。

スケッチの部分は、手書きで描いたものをスマフォで撮って貼り付けてもいいし、直接書き込んでもいい。アイデアは文章だけでなく、図で書くことが大事である。

 

 

各グループのFigjam上でスタッフが見てわかるように、一覧化してまとめておく。

6|今週の課題

 

本日出した10のアイデアを元に、さらにそこから発想を重ねていく。次回演習はその中からスタッフとの相談の上で一つに絞り、企画プレゼンにむけた準備を行う。自分たちですら愛せないアイデアしか集まっていないと、全部やり直し(=チームごと周回遅れ)となる。数を埋めようとするだけでなく、心から面白いと思えるアイデアが生み出せるまで、全員でしっかりと深めてみよう。

 

1)10個以上のアイデアシートを、figjam上でわかるように整理しておく。 また、各班のチャンネルに、アイデアシートのキャプチャ画像をすべて掲載する。画像は内容がわかる程度の大きさで構わない。(チームメンバーの名前も必ず記すこと)

 

2) コンセプトシート( PDF)に沿って、企画案を最低2つ(A案/B案)をチームでまとめ、classroom / Discordの指定場所にアップする。

 

◎〆切 6/10(月)13:00